変性による大動脈弁狭窄(aortic stenosis; AS)は加齢とともに発症,進行する.したがって他の心疾患を有している患者において,加齢に伴いASが
併発してくる場合がある.もともと存在していた心疾患が原因で左室収縮機能が低下している状態にASを併発した場合は,ASの重症度評価に注意が
必要である.大動脈弁口面積<1.0 cm2 であるが,一回拍出量が低下しているために大動脈弁の圧較差が重度の基準を下回っていることがある
(low-flow, lowgradient aortic stenosis).このような患者のなかで,一回拍出量の増加とともに大動脈弁口面積が増大でき,大動脈弁圧較差が上昇
しない場合は,大動脈弁に対する直接的介入は必要ない.したがって,LVEF低下を伴うlow-flow,low-gradient aortic stenosisの患者の治療方針決定
にはドブタミン負荷心エコー法を行い,一回拍出量を増加させた際の大動脈弁口面積,大動脈弁圧較差の変化を評価して方針を決定する.経カテーテ
ル的大動脈弁留置術(TAVI)または経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)ついては,XI. 手術療法 1.手術・TAVI(p. 96)を参照されたい.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)