心不全患者では,β遮断薬やジギタリス製剤など徐脈をきたす薬剤を併用することが多く,徐脈に伴う脳虚血症状を有する場合や,徐脈が関連する心
不全症状を有する場合には,まず薬剤の減量を考慮する.ESCのガイドラインでは,3秒以上の洞停止,洞調律で50 拍/分以下,心房細動で60 拍/分以
下の徐脈となった場合には,徐脈を助長する薬剤の投与量を検討することが推奨されている16).心房細動の場合には,β遮断薬の心拍数減少による予
後改善効果は明らかでなく265, 491),まず安静時の心拍数110 拍/分以下を目標とする.β遮断薬などの薬剤が心不全治療に有効であり,継続や増量が
必要不可欠であると判断される場合には,ペースメーカの植込みを考慮することもある.一方で心不全に対するβ 遮断薬投与目的のみで,あらかじめ
ペースメーカを植込んではならない.ペースメーカの適応となる徐脈性不整脈の心不全患者では,永続性心房細動でないかぎり心房心室同期ペーシン
グを選択し,徐脈を理由に十分なβ遮断薬が投与できていなかった症例では増量を行う.心不全患者の徐脈性不整脈に対するペースメーカ治療により,
幅の広いペーシング波形となり両心室ペーシングが必要となる症例もある(詳細についてはVII. 非薬物治療 2. 心臓再同期療法[p. 46]を参照).
表35 心不全患者に併発する徐脈性不整脈に対するペースメーカ治療の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)