NPPV の一般的適応条件
① 意識があり,協力的である
② 気道が確保できている
③ 喀痰の排出ができる
④ 顔面の外傷がない
⑤ マスクをつけることが可能
NPPV 禁忌事項
① ドレナージされていない気胸がある
② 嘔吐,腸管の閉塞,活動性消化管出血がある
③ 大量の気道分泌物がある
④ 誤嚥の危険性が高い
NPPV から気管挿管への移行基準
① 患者の病態が悪化
② 動脈血ガス分圧が改善しない,または悪化
③ 気胸,痰の滞留,鼻梁のびらんなどのあらたな症状,または
合併症の出現
④ 症状が軽減しない
⑤ 意識レベルの悪化
 急性心不全患者では,まず鼻カニューレ,フェイスマスクなどで2~6 L/分の酸素吸入を開始する.PaO2 80 mmHg(SpO2 95%)未満,またはPaCO2
50 mmHg以上の場合,あるいは頻呼吸,努力性呼吸,起座呼吸など臨床症状の改善がみられない,もしくは悪化する患者では,すみやかにマスクや加
圧バッグを用いたNPPVを開始する(表60)

 使用するモードは持続的陽圧呼吸(持続的気道陽圧法)(CPAP)を第一選択とするが,CPAPを行っても高CO2 や呼吸困難が続く場合にはbi-level
PAPに変更する.

 マスクはトータルフェイスあるいはフルフェイスタイプのものが顔への密着度がよく,開始しやすい.マスクを装着し,呼気終末陽圧呼吸(positive end-
expiratory pressure;PEEP)を5~7.5 cmH2O,吸入酸素濃度(fraction of inspiratory oxygen; FiO2)0.4以上で開始する.開始後短時間で酸素化を評
価し,適正レベルをすみやかに決定する.高濃度酸素の投与は避け,SpO2 95%以上を設定目標とする.NPPVによる心原性肺水腫の治療目的は,
肺間質の拡張障害,肺コンプライアンス低下,気道抵抗上昇に伴う機能的残気量の減少,肺胞内浮腫液漏出による死腔換気の増加,呼吸筋疲弊に伴う
低換気による酸素化および換気障害への進展,低酸素血症に伴う心収縮力低下や肺血管抵抗上昇,さらに右室後負荷増大,という悪循環を断ち切ること
にある.この有効性に関する多くのメタ解析があり,気管挿管率の低下,ICU滞在日数の減少,院内死亡率の低下が示されている754- 758)

 また,NPPVに対して治療抵抗性を示す患者については,すみやかに気管挿管を施行し,人工呼吸器管理を行う.移行基準を表60に示す.

 ATTENDレジストリーでは,4,842人の急性心不全患者のうち起座呼吸を呈する患者は63.3%であったが,そのなかでNPPV使用症例は24.4%であり,
その内訳はCPAP15.4%,bi-level PAP 16%であったと報告されている40)

 急性心原性肺水腫の呼吸管理を成功させるためには,いたずらに酸素投与のみで様子をみるべきではなく,低酸素血症に呼吸困難を伴っていれば
NPPVを早期に開始するべきである759, 760)
5.1.2 酸素療法, NPPV
表60 急性心不全に対するNPPV の適応・禁忌・気管挿管への移行基準
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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