急性心不全治療のもっとも優先すべき課題は救命である.その点から考えると急性心不全で用いられるいくつかの薬剤は,いわゆる心筋保護薬の薬理
作用とは相反するものがある.たとえば,昇圧を目的とした薬剤が心原性ショックを合併する急性心不全治療に用いられるが,一方では心筋保護薬の多
くが降圧作用を併せ持つ.したがって,救命できる状況を確保できたなら,次にその後の長期予後やQOLの改善を到達目標に掲げるべきである.慢性心
不全においては心筋保護という概念が確立されているが,急性心不全においてもその多くが慢性心不全の急性増悪であることを考慮すると,急性期から
慢性期の対応を考慮に入れて心筋保護に心掛ける.
詳細はVI. 薬物治療(p. 35)を参照のこと.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)