4.4.3 PDEIII阻害薬
 PDEIII阻害薬の長所としては,1)β受容体を介さずにサイクリック AMPの分解を阻害することで効果を発揮するので,カテコラミン抵抗状態にも有効,
2)血管拡張作用と強心作用を併せ持ち,心筋酸素消費量の増加がカテコラミン薬に比し軽度,3)硝酸薬に比し耐性が生じにくいことがあげられる.急
性心不全では静注投与開始後作用発現がすみやかであり,血行動態改善効果はほぼ用量依存性である750).β遮断薬が投与されている慢性心不全の
急性増悪では,交感神経受容体がブロックされているので,ドパミンやドブタミンなどの強心効果は制限される.一方,β受容体を介さないPDE阻害薬や
コルホルシンダロパートなどのアデニル酸シクラーゼ賦活薬は,優れた心拍出量増加と肺毛細管圧低下作用を発揮する751)

 ADHEREでの検討では,ミルリノン投与例の院内予後がドブタミン投与例よりも良好であったが752),プラセボを対照としたミルリノンの比較試験
OPTIME-CHFではミルリノン投与群に血圧低下,新規の心房性不整脈の副作用が多く認められた753).本研究は,本来ミルリノンを必ずしも必要としな
い低リスク心不全患者を対象としたものであり,これらのことからもカテコラミン強心薬と同様に病態に応じた適応,投与量,投与期間に十分注意を払
い,必要最少量を最短期間で使用する必要がある.一般的には血圧低下や不整脈の出現に注意しながら持続静注にて開始する.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
次へ