モルヒネは中枢性に働き,交感神経緊張の著しい亢進を鎮静することによって細動脈や体静脈を拡張し,心拍数の減少により心筋の酸
素需要は減少する.細動脈の拡張により後負荷は軽減し,また静脈系の拡張により静脈還流量は減少し,肺うっ血は軽減する718)
血管の拡張が過度になると血圧は低下するため,低血圧,徐脈,高度房室ブロックを合併する患者では注意を要する.呼吸器系に対して
は,呼吸回数の減少や呼吸仕事量の抑制により酸素需要を減少させるが,炭酸ガスに対する呼吸中枢の反応性低下により呼吸抑制が
起こりやすく,脳内出血例,意識低下例,気管支喘息例,COPD例には原則として投与しない.予後に対する効果については,後ろ向き
研究ではあるが,かわらない,もしくは悪化させると報告されており719, 720),ルーチンでの投与は推奨されない.
4.1.1 塩酸モルヒネ
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急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)