今回の改訂における最大の変更点は,従来から急性心不全と慢性心不全に分かれていた心不全診療ガイドラインが1本化されたことである.これは,
急性心不全の多くが慢性心不全の急性増悪であり,急性期から慢性期までシームレスな治療の継続が必要であることから,診療ガイドラインも急性と
慢性の2つに区分するのは現実的でないという認識に基づくものである.
 
 今回の心不全診療ガイドラインにおいて改訂した内容の主要なポイントは以下のとおりである.
1) 心不全の定義を明確化するとともに,一般向けにわかりやすい定義もあらたに記載した(II. 総論 1.定義・分類).
2) 心不全とそのリスクの進展のステージと治療目標をあらたに記載した(II. 総論 1. 定義・分類,V. 心不全治療の基本方針).
3) 心不全を,左室駆出率(left ventricular ejection fraction; LVEF)が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction; HFrEF)と
       LVEFが保たれた心不全(HF with preserved EF; HFpEF)に加え,LVEF 40~49%をHF with mid-range EF(HFmrEF)に分類して記載した.
       さらに,HFpEF, improved( またはHF with recovered EF)についても記載した(II.総論 1. 定義・分類).
4) 心不全診断アルゴリズムをあらたに作成した(III. 診断 1. 診断).
5) 心不全進展のステージをふまえ,心不全予防の項をあらたに設定した(IV. 心不全予防).
6) 心不全治療アルゴリズムをあらたに作成した(V. 心不全治療の基本方針).
7) 併存症の病態と治療に関する記載を充実させた(IX.併存症の病態と治療).
8) 急性心不全の治療において時間経過と病態をふまえたフローチャートをあらたに作成した(X. 急性心不全).
9) 重症心不全における補助人工心臓治療のアルゴリズムをあらたに作成した(XI. 手術療法).
10) 緩和ケアに関する記載を充実させた(XIII. 緩和ケア).
2.本ガイドラインの主要な改訂点
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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