本ガイドラインでは,心不全の発症・進展を4 つのステージに分類しているが,ステージAとBは明らかに心不全ではなく,心不全発症リスクのステージで
ある.このような心不全発症前のリスクであるステージにおける治療を,心不全の治療ガイドラインにあえて含めるのは,その予防がきわめて重要である
からにほかならない.本ステージ分類は2005年のACC/AHAガイドラインで初めて提唱されたものに準拠しているが,このコンセプトの重要性は,10年以
上経過した現在においても,またわが国においても変わらない.
各ステージにおける治療目標はステージの進行を抑制することにある.すなわち,ステージA(リスクステージ)では心不全の原因となる器質的心疾患の
発症予防,ステージB(器質的心疾患ステージ)では器質的心疾患の進展抑制と心不全の発症予防,そしてステージC(心不全ステージ)では予後の改
善と症状を軽減することを目標とする.ステージD(治療抵抗性心不全ステージ)における治療目標は,基本的にはステージCと同様であるが,終末期心不
全
では症状の軽減が主たる目標となる.このような治療目標を達成するためにステージごとに治療を実施する(II. 総論1. 定義・分類 図1 20)[ p. 11]).
心不全とそのリスク 心不全の進展イベント 心不全ステージ分類 7)
心不全リスク (突然死) 器質的心疾患発症 ステージ A 器質的心疾患のないリスクステージ
急性心不全
慢性心不全
時間経過
ステージ B
器質的心疾患のあるリスクステージ
ステージ C
心不全ステージ
ステージ D
治療抵抗性 心不全ステージ
心不全症候出現
心不全治療抵抗性
症候性心不全
身体機能
高血圧 糖尿病 動脈硬化性疾患 など
虚血性心疾患 左室リモデリング(左室肥大・駆出率低下)
無症候性弁膜症 など
治療目標
・危険因子あり ・器質的心疾患なし ・心不全症候なし
・器質的心疾患あり ・心不全症候なし
・危険因子のコントロール ・器質的心疾患の発症予防
・器質的心疾患の進展予防 ・心不全の発症予防
・症状コントロール ・QOL改善 ・入院予防・死亡回避
・緩和ケア ・再入院予防 ・終末期ケア ・器質的心疾患あり
・心不全症候あり(既往も含む)
・治療抵抗性( 難治性・末期)心不全
慢性心不全の急性増悪 (急性心不全)反復
心不全発症心不全の難治化
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)