a. 急性大動脈弁逆流症488)
急性発症の大動脈弁逆流症(aortic valve regurgitation;AR)は,迅速な外科的処置を行わないと心原性ショックのおそれの強い緊急度の高い病態であ
る.原因として大動脈解離や感染性心内膜炎,外傷,医原性による大動脈弁の障害がある.急性ARでは外科治療の適応について早急に検討する.
心エコー法は確定診断と重症度評価に必須であり,原因検索および肺高血圧の程度を推測できる.IABPは禁忌である.
b. 急性僧帽弁閉鎖不全症488)
急性発症の僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症,mitral valve regurgitation; MR)では,急速な左室および左房への容量負荷が発生し,肺水腫や心原
性ショックを呈する.血管拡張薬,カテコラミン薬の投与によって血行動態の改善が得られない患者では緊急手術の適応となる.IABPは手術を前提とした
循環動態の維持に用いられる.経食道エコーはカラードプラをより正確に描出する.IABPは手術の準備が整うまでの間,患者の血行動態を安定させる.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)