推奨クラス エビデンスレベル
Minds推奨グレード Mindsエビデンス分類
食事や運動など一般的な生活習慣の改善も含めた包括的なアプローチ I
A A I
SGLT2阻害薬(エンパグリフ
ロジン*,カナグリフロジン**) Ⅱa A B II
チアゾリジン薬Ⅲ A D I
 心不全合併例における具体的な糖尿病治療戦略の確固たるエビデンスはないが,食事や運動など一般的な生活習慣の改善に加え,個別の病態に応じ
て,わが国の糖尿病治療ガイドに準じた糖尿病治療薬を用いた治療による包括的なアプローチが重要である.

 インクレチン関連薬の大部分の心血管アウトカム試験において,心不全に対する有効性および心不全リスクの増大は認められなかったものの,SAVOR-
TIMI 53( サキサグリプチン)392)では,心不全入院がサキサグリプチン投与群において有意に増加した393)

 SGLT2阻害薬に関して,エンパグリフロジン175)およびカナグリフロジン178)は心血管高リスク2型糖尿病患者の心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳
卒中からなる複合主要心血管イベントおよび心不全入院を低下させ,心不全合併の有無にかかわらず心血管高リスク2型糖尿病患者に対する心血管予後
の改善が期待される176, 177).しかし,これらの大規模試験における心不全合併患者の登録割合は全体の10~15%と少なく,心不全自体に対する治療効
果に関しては今後の臨床試験の結果が待たれる.さらに,これらの結果がSGLT2阻害薬全体のクラス効果であるかどうかのエビデンスは現時点では存在
しないため,同クラスの他剤を用いた大規模臨床試験の結果を待つ必要がある.また,後期高齢者などでの有効性については今後の課題である.

 以上より,心不全合併の糖尿病治療においては,低血糖を避け,糖尿病治療薬の特性や,これまでの臨床試験の結果を参考に,各病態に応じた治療薬
の選択を行う.
7.2.2 心不全合併の糖尿病治療(表40)
表40 心不全を合併した糖尿病に対する治療の推奨とエビデンスレベル
*EMPA-REG OUTCOME試験(エンパグリフロジン)175)では,
全例が心血管病既往例であった.
**CANVAS 試験(カナグリフロジン)178)では,全体の34%が
心血管高リスク一次予防症例で, 66%が心血管病既往例であった.
また同試験では, わが国未承認用量も含まれていた.
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急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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