心機能分類
身体活動能力指数
(Specific Activity
Scale;SAS)
%最高酸素摂取量
(% peak V・O2)
I 6 METs 以上基準値の80%以上
II 3.5~5.9 METs 基準値の60~80%
III 2~3.4 METs 基準値の40~60%
IV 1~1.9 METs 以下施行不能あるいは
基準値の40%未満
運動耐容能のもっとも客観的な指標は最大運動時の酸素摂取量である.最高酸素摂取量(peak oxygen uptake;peak V・ O2)はトレッドミルや自転
車エルゴメータを用いた症候限界性多段階漸増負荷法による心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing; CPX)で評価する181).
酸素摂取量は全身の機能(心機能,肺機能,末梢機能,および肺・体循環機能)を統合した指標であり182),予後評価171, 183- 185),心臓移植候補者の
決定171, 185- 187),重症度評価188)に有用である. 最高酸素摂取量14 mL/kg/分未満の症例は生命予後が不良であり171),なかでも10 mL/kg/分未満の
症例はきわめて予後が不良である.心肺運動負荷試験における運動終点は被験者の運動努力に依存することから,不十分な負荷による検査結果の
信頼性が問題になりえるが,最大負荷時の呼吸商が1.1を超える場合には信頼度が高い.また,年齢や性別の影響を除外するために,最高酸素摂取
量の年齢別標準値に対する予測率を用いた場合,%最高酸素摂取量50%未満は予後不良とされる189).NYHA心機能分類,SASおよび%最高酸素摂
取量の比較の目安を示す(表20)174).また労作時息切れによって運動が制限されている患者において,その運動制限が心不全によるものかどうかを
鑑別する際に有用である182).
さらに,有酸素運動単独から無酸素運動が加わるポイントである嫌気性代謝閾値も重症度の良い指標である181, 182).最大運動能力のおよそ50~
55%にあたり,日常の活動レベルを表す指標として用いられる181, 182).嫌気性代謝閾値以上の活動によって交感神経活性が起こることが知られて
いる.したがって,嫌気性代謝閾値を知ることによって,心不全患者の運動許容範囲を設定することができる190).さらに,心不全患者において運動療法
は予後や運動耐容能を改善する治療法であるが,運動処方の作成にあたっては嫌気性代謝閾値が参考になりうる191).
最近,しばしば使われる指標が最大負荷まで行わなくとも得られるV・ E/V・ CO2 slopeである.この指標は一定のCO2排泄に要する換気量を示すの
で,換気効率ともよばれ,心不全の労作時呼吸困難に関連する指標と考えられている.V・ E/V・ CO2 slopeが35を超える場合に予後不良とされている
192).心不全における運動耐容能評価の推奨とエビデンスレベルをまとめた(表21).
NYHA心機能分類に厳密に対応するSASはないが,「室内歩行2
METs,通常歩行3.5 METs,ラジオ体操・ストレッチ体操4 METs,
速歩5~6 METs,階段6~7 METs」をおおよその目安として分類し
た.専門家のコンセンサスのもと作成した分類の目安である.
(難病情報センター174)より)
表21 心不全における運動耐容能評価の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)