心不全患者は,急性心不全,慢性心不全,どちらにおいても貧血(WHOの貧血診断基準:血中ヘモグロビン値13.0 g/dL未満[男性],12.0 g/dL未
満[女性])を合併することが多い.日本で行われた慢性心不全・急性増悪による入院患者を対象とした2 つの臨床研究,ATTEND 649)とJCARE-
CARD 650)においては全登録患者の約60%,慢性心不全の外来患者を対象とした臨床研究CHART-2 651)においては全登録患者の約35%が貧血を
合併していたことが報告されている.
また,貧血は急性,慢性,どちらにおいても心不全患者の独立した予後規定因子である649, 651).心不全における貧血の成因については,体液貯留
による血液希釈,慢性腎臓病合併によるエリスロポエチン生成低下,炎症性サイトカイン活性刺激による骨髄造血能低下,鉄欠乏など多くの因子の関
与が報告されており,その成因は特定されていない.よって,貧血をいかに治療するかに関してはまだ確立したエビデンスはない.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)