気管支喘息は,心不全の急性増悪時に鑑別が必要な疾患である.気管支喘息は非発作時には胸部X線にて異常所見を認めることは少ないが,
気道壁の肥厚と過膨張が認められ,喘息発作時に顕著となる636).
COPDは全身性疾患であり,肺だけでなく全身性炎症を惹起し,酸化ストレスの増大を伴い,左心不全患者の約20~30%に併存する637- 639).
COPDは左心不全の発症および心不全に伴う心血管死の独立した危険因子である640, 641).COPDの併存は心不全安定期のスパイロメトリーによる1
秒率の低下で診断できる637, 642).肺うっ血がある場合,1秒率は約10~20%低下するため過小評価される危険性があり,肺うっ血改善6~8週後に評
価することが望ましい642).心不全とCOPDの増悪による呼吸不全の鑑別は困難であるが,BNPあるいはNT-proBNPが診断の助けとなる639, 643).
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)