糖尿病を合併する心不全症例は増加しており,その頻度は13%(1989年)から47%(1999年)へ増加している580).わが国からの報告では,
心不全症例の糖尿病合併率はJCARE-CARD 32)では30%,CHART-2 34)では23%であった.さらに,急性心不全症例においても34~44%と高頻度
であった581- 583).また,糖尿病患者の約半数が左室拡張機能障害を有するとされており584),そのような症例では心不全を含む心血管アウトカムが不
良である585).急性冠症候群患者においても,新規心不全発症を含む心血管アウトカムに対して,糖尿病は心血管疾患の既往と同等の予後規
定因子であり,両者は相乗的にアウトカムの悪化へ寄与する217, 586).さらに,インスリン抵抗性も心不全と負の連鎖を形成している587)
またCHART-2では,とくに虚血性心不全患者における微量アルブミン尿は予後規定因子であり,その傾向は糖尿病症例において顕著であった588)
以上のように,糖尿病と心不全は密接に関連していると同時に,糖尿病は心不全の独立した危険因子であることから589),心不全の発症予防や進展
抑制を目的とした糖尿病への治療介入が必要である.
7.1病態
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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