薬剤によるレートコントロールが困難な場合や,洞調律維持が血行動態や心不全管理から有益であると判断される場合には,リズムコントロールが選
択される.急性心不全に合併する心房細動では,一度電気的除細動に成功しても心房細動が再発する場合や,再発が予想される場合には抗不整脈
薬使用下での電気的除細動が試みられる.心機能低下症例でのリズムコントロールに使用できる経口薬剤は,アミオダロンが第一選択となる.
わが国では,心不全に合併した心房細動に対する低用量アミオダロンの洞調律維持効果および心拍数抑制効果が報告されており494),保険が適用さ
れている.ベプリジルはアミオダロンと比較すると十分なエビデンスはないが,左室機能低下症例に対するベプリジルの有用性がわが国から報告されて
おり,17人の持続性心房細動症例のうち9人で洞調律への復帰が得られている495).ニフェカラントは臨床使用量では純粋なカリウムチャネル(IKr)
遮断薬であり,陰性変力作用がなく低心機能症例でも使用可能で,重症心不全症例の心房細動に対する有用性が報告されている496).ただし,保険適
用外使用であり,QT延長に伴うtorsade de pointesの可能性もあり注意を要する.急性心不全,慢性心不全を問わず,心房細動の洞調律維持療法とし
て,陰性変力作用が懸念されるナトリウム遮断薬を用いてはならない497)

 有症候性の薬剤抵抗性発作性心房細動に対する待機的高周波カテーテルアブレーション498)は,根治治療としてクラスIの適応となっている499, 500)
一方で,心不全症例や心機能低下症例に対するカテーテルアブレーションの効果については十分な検討がされていない.心不全合併心房細動患者に
対するカテーテルアブレーションのメタ解析では,LVEFの改善や,NT-proBNP値の低下が報告されているが501),長期予後に関する成績は明らかでな
い.薬物治療と異なり副作用の懸念はないが,カテーテル治療に伴う合併症リスクや心房細動再発もあり,慎重に適応を検討する.

 頻脈性心房性不整脈が引き金となり心機能低下を惹起する頻拍誘発性心筋症という病態があり502),頻拍の消失により心機能が改善する特徴を有す
る.急性期には,拡張型心筋症などの基礎心疾患を有する場合との鑑別が難しく,結果的に心機能が回復した場合に本症と診断することも多い.
心房細動に対するカテーテルアブレーションによる洞調律化が心機能の回復に有効との報告もある502)
1.2.3 リズムコントロール
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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