急性非代償性うっ血性心不全では,肺うっ血や過剰な体液の貯留に伴いうっ血肝や浮腫が生じる.急性期の治療ではこれら体液過剰をすみやかに解
消する必要があるが,腎機能が低下し,利尿が得られない患者では,急性血液浄化療法が適応となる(表63).
その目的としては,
1)肺水腫の治療
2)アシドーシスの改善
3)電解質異常の補正
4)輸液スペースの確保
5)体液性の介在物質(humoral mediator)の除去
などがあげられる.
1978年に初めて心不全に対する限外濾過療法が報告されて以来765),いくつかの臨床試験により容量負荷軽減や症状改善効果が報告されてきた.
2007年に報告されたUNLOAD試験は,HFrEFを基礎心疾患とする非代償性心不全で容量負荷を認める患者を限外濾過療法群と利尿薬静注療法群に
割り付けて行われたが,限外濾過療法にてより安全かつ有意に体重減少と除水がなされた.また,症状改善度,腎保護効果は利尿薬静注療法と有意
差を認めなかったものの,90日後の再入院率や予定外の来院率を減少させ,限外濾過療法の安全性と有用性が示された766).
しかしながら2012年に報告されたCARRESS-HF試験では,体重減少については両群で有意差は認められず,限外濾過法群のほうが薬物療法群より
もクレアチニン値上昇が大きく,さらに重篤な有害事象を発現した患者の割合は,限外濾過群のほうが薬物療法群よりも高いという結果になった767).
表63 急性心不全における血液浄化療法の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)